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欅(けやき)
 日本人が木目を思うとき一番先に思い浮かぶのが欅の木目だ言われています。親しみをもって語られ、喫茶店や通りの名前にも「欅」がよく使われます。江戸時代から現代にいたるまで大黒柱を初め木造建築の構造材として、また床回りや扉、縁側の床にいたるまで堅牢で美しい木目が日本の家を潤いあるものにしてきました。かつては華麗な手打金具に彩られる箪笥や京水屋、納戸の材料にも良質の欅が求められました。お椀やお盆はじめ様々な漆器や生活用品の素材としても欅ほど活用されているものはありません。 私達にとっても一番長く付き合っている材が欅です。現代にあってはこの堅牢で漆との相性もいい欅にはどんな用途がふさわしいのでしょう。幸いにも原木から取り扱っているためその様々な表情がいつも身近にあります。たとえば「瘤の器」と名付けた根株の一部を素材にした器はそのフォルムを素材にまったくゆだねたものです。どんな匠の技もこの天然の巧まざる造形をなぞることはできません。数百年の時間が生命に与えた形です。
 
 ベンチステージは「ありのまま」の美しさを人の手で損なわないよう配慮して作ります。だから虫食いは虫食いのまま、樹皮に近いところの曲線はそのままです。人がありのまま生きたいと思うようにありのままの欅も生かしたいのです。自然をさりげなく残したベンチステージの上に花束や思い出の写真を飾っていただければと思います。
 スプーンは欅の堅牢さを一番生かしたものです。欅と漆以外のなにも使わず漆を吸い込ませるだけ吸い込ませることでひたすら堅牢です。和のスプーンと名付けました。熱いものや冷たいものも一度しっかり受けとめやさしく口に運びます。
 靴べらは靴の生活に変わって生まれた新しい生活用具です。欅の弾力や感触をお試しください。健康の道具はふとしたきっかけで10年前から作り初め、最初は「なにこれ」といった反応もありました。今では健康志向も手伝ってファンになっていただく方も増えました。工芸の領域として認知されたとは申せませんが、実際に必要なものじゃないかしらという思いでツボや伝承の健康の知恵を調べたりしています。