2025/02/21

お知らせ

手わざの道具展 お知らせ

とき 3月22日(土)〜4月23日(水)
於 おかやギャラリー

手わざの道具展 温故知新

いつも工芸品にご理解とご支援を賜り、心より御礼申しあげます。

 さて、もうすぐ「手わざの道具展」が始まります。作り手の皆さんとの一年ぶりの再会を楽しみにしています。なかには栗盛俊二さんを始め、国に認定された伝統工芸士の方も多数いらっしゃいます。

ところで、なぜ伝統工芸が大事なのか私なりの考えをお伝えしたいと思います。 私たち一人一人には父母があり、そのお陰で生まれ育てられて今があります。その父母にはまた同様に父母があり、そのまた父母にも父母があります。今あるものがあるには原因があり理由があります。個人的なことで恐縮ですが、私は朝起きて最初にお父さんお母さんありがとうございますと心で手を合わせています。

 伝統工芸品の中には今ではほとんど使われなくなったものもたくさんあります。着物や下駄草履などは生活の洋風化によって洋服や靴に変わり、使われる場面も減りました。和紙、漆器なども限られた市場になっています。けれども、今の暮らしに生きている多くの知恵や技術が、伝統工芸の中に連綿と受け継がれていて、それが今の暮らしの土台になっていることは間違いありません。先人の営みやその中で培われたものがあって今があります。たとえば日本のトイレを絶賛する海外の投稿が絶えませんが、INAX、TOTOなどの衛生陶器は急須で有名な常滑の伝統工芸から出発していますし、村田製作所もガイシとよばれる絶縁体のセラミック生産(陶磁器)をルーツとしています。江戸時代から続いた出雲の綿花生産、織物が明治にカネボウやダイワボウを誘致し近代工業の元になったことは周知の事実です。また、たたらの歴史は日立金属につながり、砂鉄と炭から鉄を作り出した技術が近代産業の根っこにあります。

 今、日本の伝統工芸から派生した近代の工業も、海外に技術移転されて徐々に身近から消えて、ほど遠いものになっています。しかし、私達が父母、そのまた父母から生まれてきたように、今の暮らしの根っこは伝統工芸の中に、受け継がれています。その技術を生かす今のライフスタイルにふさわしい物も考案され、デザインされています。  手しごとならではの道具は、工業化では決して得られないものがあります。また、一人一人の顔を思い浮かべてつくられる、インテリアや道具は大量生産にはない価値があります。是非、この「手わざの道具展」を皆様の暮らしにお役立ていただきたいと存じます。

 話は変わりますが、4月に島根県の物産観光館がリニューアルオープンします。物産協会は島根の伝統工芸の振興を担う機関として設立以来、県内の事業者を支援してきました。この度のリニューアルにあたり、より深くお客様のご理解を賜るために伝統工芸の紹介等をするギャラリーを店内2階に開設いたします。 4月8日のオープンに際して、明治大正昭和の木芸の名工の作品展ならびにおかや木芸2505作品展を開催させていただくことになりました。名工作品の復刻のプロジェクトも進めており、島根の木芸品の歴史をご覧いただける機会かと存じます。来月、改めてご案内をさせていただきますが、温故知新の精神をもって、リニューアル記念の展示会とさせていただきたいと存じます。 何卒よろしくお願い申しあげます。