izumokurogaki私たちについて

悠久の時を映す黒柿の紋様

「黒柿」とは、樹齢数百年、白と黒の美しい模様を持った希少な柿の古木です。黒柿には年輪とは異なる独特な紋様が幹に現れます。黒柿は美しい木目と滑らかな木肌、導管が細く指物など細かい細工がしやすい木材ですが、くるいやすいため職人の技量が試されます。正倉院から現代に到るまで、卓越した木工職人達が黒柿の工芸品を作ってきました。この黒柿に魅了され、おかや木芸では黒柿で文具、器、カトラリー、茶道具、家具などを制作しています。

黒柿の美

樹齢数百年を越える柿の古木のうち、ごく稀に黒色の紋様があらわれることがあります。 この紋様があらわれた柿を「黒柿」と呼びます。
黒柿の模様や色はどれひとつとして同じものはなく、見るもののこころを強く惹きつける不思議な魅力を持っています。
黒柿は、たとえ同じ土地や条件で育っても、すべてが黒柿になるわけではなく、全くちがう杢目や色になったりします。

黒柿の性質

柿材は硬く、密度が高いため加工が難しい材料です。黒柿の特徴として、黒い部分と白い部分で収縮率が異なるため、乾燥の途中で多くが割れてしまいます。製材後の乾燥には特に気を使います。取り扱いの難しい木材ですが、磨けば磨くほどに滑らかな木肌になり、美しい艶がでます。
数が少なく、高価な黒柿ですが、購入した黒柿にすべて紋様がでるわけではありません。見える部分では黒い紋様がでていても、いざ切ってみると材料として使えなかったり、一番よい紋様に虫が喰っているなど、作り手泣かせの木です。

こちらは原木の黒柿。黒柿は、何年も自然乾燥させる必要があります。長い年月を経て、ようやく材料として使えるようになります。

黒柿の紋様の発現については、遺伝的要因、土壌、微生物やタンニンの影響などではないかと推測されていました。しかし、2017年に黒柿について、「化学的、鉱物学的および微生物学的特徴と黒柿における生体鉱物の結晶形成」についての論文が発表されました。

その論文によると、黒柿の黒い部分には有機物や微生物が多く存在し、生育していた土壌にも有機物や微生物の存在が認められました。黒柿の根の白色部分で、球菌などの微生物がCa,P,S,Cl,などを取り込み、生体アパタイト(燐灰石)を形成。成長するにしたがって、更に元素を取り込みながら黒色化。そして年月を経るにしたがって、幹の辺材部に黒色の縞模様(孔雀杢)を作りながら珪化木(植物の化石)を形成することが証明されました。

〈参考文献〉

田崎和江・竹原照明・橋田由美子・橋田省三・中村圭一・横山明彦・青木小波・田崎史江.2017.希少銘木「黒柿」の物理化学的特徴と生体鉱物化作用.地球化学.71,97−113

黒柿と日本文化

正倉院御物の中には、黒柿を用いた工芸品が数多く残されています。特に知られるものとして、厨子、供物台、文庫、鞍(馬具)などがあります。また、御物の中には黒柿を用いた箱がいくつかあり、香を入れ、書面に香りを移すための箱など、黒柿と香のつながりのルーツをみることができます。また、朽ち木という黒柿等の芯材を組み合わせて作られた箱も、のちの寄木細工につながる興味深い意匠です。
正倉院御物の中にこれだけ多くの黒柿作品が残っている事は、黒柿が日本文化に深く関わっているということの証しです。

時代は下り、鎌倉・室町時代以降、武士の時代が続きます。この時代、仏教が力を得て、建築では書院の様式が生まれます。茶道、華道、香道といった日本文化の源流がこの時代にあります。禅宗の塔頭のひとつに、総黒柿の書院が残されています。悠久の時を映す黒柿の天然の紋様に時の高僧や文人墨客は心惹かれたと想像できます。

 

〔 作品紹介 〕

テーブルウェアtablewear

インテリア・家具interior

文具stationery

box

茶道具tea

仏具butsugu